Amanda

吐き溜まり。

2020年5月から2020年10月の短歌

春はもう此処に在らずと知った時紫陽花の葉の緑色濃く

夏はまだ通り過ぎてもいないのに気分は秋の残暑みたいな

鮮明な緑は夏を忘れない泡が弾けたクリームソーダ

あの人の実家があった名前だけ聞いたことある千葉の船橋

朝倉がこの後財布を忘れても夏は透んでて空は青くて

「5時半でござる」と君が口にして足音立てずトイレに向かう

泥棒は子の刻にあり冷凍庫より盗み出すアイスキャンディ

しろくまを美味しいと言う唇でさよならなんて口にするのか

名前だけちょっと知ってるアイドルのかわいい顔を描いたのはモネ

抱擁は愛の囁き止め処なく流れるときが愛おしかった

止まらないソーラーシステム君がその木星に針を落とした

手羽先の骨にがぶりと齧り付く君の姿を前世でも見た

飲み会で一缶づつしか飲めぬ吾の縦に並べた友達の数

縦波がわからなかった高3の夏も僕らは自粛していた

マチュピチュに行きたいわけじゃないけれど君の気を引くように「行きたい」

この貝もかつては海で暮らしてた貝殻で描くいびつなハート

遥か先そんな九月は半ば過ぎドゥユ・リメンバー夏の青さを

偶然の点と線とが描き出す蜘蛛の災難雨の芸術

理科室で溶かす金属泡となれ夏の終わりの音が聞こえる

新品の足裏掴む木の床を傷めぬようにそっと椅子引く

 

2019年11月から2020年4月の短歌

二月から私一人が神隠し職場でああいた、ああいうあの子

初夏を行く電車の中の学生の脚の開きで暑さを知る

もし明日中央線にすわれても好きと伝えた今日は本当

半分はゴミ箱に行く言の葉は捨てた分岐の石に重なる

鉛筆を持つ手は汗ばむつかの間の涼しい風が吾を取り巻いても

乳房と木綿のシャツの間から湧き上がる風籠る焦燥

残高が人生の価値を突きつける大丈夫だと誰か言ってよ

幅跳びで一メートルも飛べずとも夢の中ではジャンプが得意

白魚にあれやこれやを言う人を気にせず泳げ振りむきもせず

ミミズ這う路は異世界いつの間に私は小人日差しを浴びて

幻想とリアルのどちらも切り取ってカメラと行くよ曖昧なまま

会った人みんなにさよなら会釈してどこか行きたいどこも行けない

『遅れます。』秋へと変わる新宿で共に君待つふやけたタピオカ

君の顔よりも大きいパンケーキよりも美味しい君の笑む顔

じゃあまたと「また」があるのか聞けぬまま中央線の改札口で

透き通るいつもの道を流行が耳を過ぎゆくマリーゴールド

道端のオレンジ揺れるあの歌を植えた誰かも耳にしたのか

揺れるのは君か私か想い馳せ私であればいいなと結ぶ

寒空に負けじと揺れるオレンジの首のなんと細きか

いつのまにどこへと消えたオレンジのマリーゴールドまた来年ね

「そのままのおまへじゃとてもふれられぬ」だけどあなたは刃先を抓む

私はね地獄の底に住んでいる地上に君を置き去りにして

家に来て最初に一言ゴミだした?なんて言うとは思わなかった

夕暮れはパステルピンクこの空の生きる時間はとても短い

あっという声と酢豚が宙に舞う転がった先で私が笑う

「置」という漢字を探す21時30分(くじはん)に目にちらつくは巣鴨拘置所

「夏が来る!」ところで僕のお出かけはローソンだけになってしまった

路地裏を流れる風に少し乗り足を延ばすとローソンに着く

 

お題「#おうち時間

2019年7月8月9月10月の短歌

まだ匂いだけのとり天夕餉まで一時のグウを持て余す

伝言をこんがらがせて彼女への想いを隠す罪悪感で

私よりいくらも高い背のせいであなたの顔は隣じゃ見えぬ

ななめから見下ろす貴方心臓が動いていないのが口惜しい

秋晴れの良い日に向日葵纏わせて貴方に似合う花を私に

予期しない長き休暇を耐えるため必要なのは好奇心なり

ろくでなし同士の二人はべらべらとしゃべって大事な何かを溢す

子をとろ子とろ口ずさむ軽快に私にとっては意味ない話

新宿で降りる気分でないままに私が下りる駅は新宿

 

2019年6月の短歌

フライパンなら防具にも攻撃の要にもなるゾンビが来ても

 

若い子をそんな時代はなかったと斜めに見やるプラットホーム

 

あの空にぽかんと一匹蜘蛛が浮き獲物がかかるのを待っている

 

胴を打ち叫び駆け抜くあの夏に吾は一本の竹刀なりけり

 

胴と吠え人体分かつ吾は刀叫び駆け抜く一本の夏

 

地平線より少し斜め前向きそこでは地上より天国の方が近い

 

 

2019年5月の短歌

幻の遠の国より帰り来る赤き光が蠢いている

 

光より遅く到し轟で気づいて寄って窓に額付く

 

ありふれた日々の端っこと端っこ切って眺めるのが趣味なんです

 

ゆらゆらと毛茸が揺れる奥底はちらり透けたり視えなかったり

 

春風の香りは車窓の向こう側ホットシェフだけ匂いがわかる

 

あのころきみはデザートフォークぼくふわふわのケーキでつつんでた

 

ラジオからアメスピの歌ぷかぷかと知らん顔して吾は蕎麦すする

 

上目遣い縁取るまつ毛の揺れみると視界はぐらりピンとはずれる

 

かかる息もう白くは曇らない体温よりも暖かな硝子

 

白光を反射し上る膝裏を目を細め追う駅前通


主が枯らすいちじくの木を仰ぎ見てドライになったと甘き実を食む


オーロラとポールはクロスしないって案内図見て漸く理解


輝くのは兎の眼 1ダースの目八百屋に並ぶ


ふりしきる桜の花を避けながらつま先だけは夏にはみ出る


我が家に歯にまつわること上に投げ下には捨つれば良き歯が生えぬ


ッタタターンを575にしたくって口をつの字に尖らせてみる


煮詰まったこの数日をふやかして虹の卵スープにして飲む


海離れ恋しとエビが涙してアメリケーヌは塩辛くなり


仄白い意識の底をひた泳ぎひそむ子供の呻きが聞こゆ


びんと張る木綿のシャツを帆に見立て初夏の風受け青空渡る


暗闇の布団で澱む初夏の夜を濯ぐ冷たい風流れてく

 

森で会う熊と戦う想像の中なら私、凄腕狩人

 

長袖の白きが眩む夏が来て長袖の様な産毛刈り取る

2019年4月の短歌

れーわという新しい章みずからの次の一歩と重ね描いて

 

目瞑ればなんども触れたような手の触った快を思い出すよな

 

会館で触れた指先快感で私、今では繋ぐのが好き

 

キイキイと口腔うごめく振動の爽やかなりし後の粘膜

 

きみが撮る真を写すいままでもこれからも一人そんな気がする

 

柱揺るがすような話だめなんだ一度だめならもうだめなんだ

 

私僕わたくしわたしあたしわたし君あなた君あなた君君

 

寒いねと、そっと振り向く。アップルのジュース持ってる、女の子たち。

 

1パーの黄色のリミット暇という概念理解しだしたスマホ

 

キャンバスに轢かれた緑の十字架に泣いてる何故か許された気して

 

残り香がバナナチップス八年前の部屋のあなたの匂いと違う

 

目覚めればカラフルなきのこ生えているベッドサイドの絵の具ボックス

 

しらべずにだらだらアニメみたけれどあ、まてこれは1話飛ばした

 

会ったなら何か変わったかなという夢ザーッというテレビに似てる

 

フードをぐっと抑えられて肌寒い首すじがまだ去年の秋にいる

 

お前それ行く気あんのか約束の時間すぎてて下着の女

 

今年のはいらないきみと見られない早く散れ散れ何が桜だ

 

にんべんに主って書いて住なんだよいないんだから家賃返せよ

 

家にいるはずがすがたの見えぬ母ざーっと水音だけが流れる

 

生き埋めにするよな籠のとりのよな母よアラサーだよもう私は

 

逢ふという契り交わさぬ待ち人の現れぬままTL流れて

 

工房で我が削りし腕環の軽きは我に似、身を捨つぬがに

 

溜息と身体の重きはズー園河馬の溜池の濁りに似てる

 

サイレンの音で目覚める明け方の音重なるは人災掠め

2019年3月の短歌

40℃燃えているのは身体か恋かEBウイルス初めてのキス

 

いやというほど好意はは伝えたはずなのでチョコレートとかどうでもいいな

 

どこから湧いてでる自信なの去年はお返しくれなかったのに

 

思い出す生きていることたまにはいい生きても死んでもそこにいるから

 

私の中の僕とわたしとどうすれば自己になれるか教えてほしい

 

どうやって生活するかを考えてどうにもここはやはりむりかな

 

夜明けまであと3時間空腹を忘れるようにまどろみたいもの

 

正日と正男日成三男の名前が出てこないままおやすみ

 

一人になっても忘れなかったねきんかんの箱が廊下にある誘惑

 

頭がいっぱいになるからやめました本を読んだら口から出したい

 

トリックはめちゃくちゃすごいおもしろいわたしのなかのゴッドチャイルド

 

きっかけはただの誤タップそのままにしてみてまたね’18の秋

 

しゃっくりがりんごの風味寝てる間にレンドルミン吐いちゃわないかなあ

 

ガリロの仕舞ってるのは本の棚家出してやるこんな郷

 

この極を乗り越えてこいと言っている春は来ないぞ私が飛ぶの

 

俺たちに明日はないって言っていたジャングルに住む君から聞いた

 

「メンヘラの」枕詞に続く語を考える会夜の4時

 

ガラナって知ってるか聞いたなにそれ、にコーラのもっとおいしいやつだよ

 

さよならを言えないわたしやっぱり、と僕の血族なんだと思う

 

泣いていたただ眠いだけ本当に何もほんとにわけもないのに

 

ねえ、幸せ?そう聞く台詞があったけどなんだったかな思い出せない

 

赤色と緑とグレー艶ついて擬態しないでいる虫の叫(こえ)

 

君の中にいたわたしはもういないわたしのなかでもきみは昨日で、

 

年賀状今年は出す暇なかったそんなの思って切手を当ててる

 

アマゾンズ絵を描いてたら見損ねた明日は2話分見るぞ絶対

 

知っているわたしのきもちそのままに誰かとはなしをしている君よ

 

きちがいとメンヘラどちらが強いのか演技は負けてた狼の骸(から)

 

この本はあのひとからでこの本はえーっと名前ははんどるねえむ

 

春になるだからちょっとは大丈夫まだ目にみえぬ春の風だが

 

じわじわと。雲の隙間に光さす。腑熱くそろり春かな

 

四つ脚の時間見ている。君と見た東京タワーに少し似ている。

 

餅試しレジの会計待ちながら学生思うオーロラタウン

 

犬とねこぶたとたぬきに犬とねこぶたぶたたぬきたぬきぶたぶた

 

足元のかじかむ日なし独り寝で絡める足が欲しいものだな

 

眠剤がすぐに薬効なくなる夜。何か気にしてるからなのかも。

 

ナポリンの色はオレンジナポリタンになんか関係あるのかなあー

 

顔と場所探した歌を耳に寄せ私も一緒に歩いて探す

 

リビングのテレビの受信そのやうに君話したる姿をあくがる